交通事故での後遺症、「症状固定」となった後に、後遺障害の認定を受け後遺障害として損害賠償が受けられます。
「後遺症等級認定」とは・・・
後遺障害等級認定
後遺症は、被害者の方それぞれで違っています。
本来ならば、被害者の方の損害額は、個別にその後遺障害に合わせて算出するべきです。しかし、何の基準もなく個別に後遺障害を賠償するには、すべての事故で裁判を行わなくてはならなくなってしまいます。
それでは、被害者に対する救済におおくの時間がかかってしまい、被害者の救済が困難なことになりかねません。
そのため、「自動車損害賠償保障法」では、後遺障害を16の等級に分類し、迅速、公平に処理ができ、後遺障害の補償がなされるようになっています。
後遺障害の慰謝料や労働能力喪失率は、この16の等級に応じて定められています。
後遺症等級の認定は損害賠償請求の基礎です。正しく等級認定を受けなければ、正当な賠償が受けられません。
後遺障害等級認定をするのは・・・
等級認定の流れ
- 症状固定の後、主治医に後遺障害診断書を作成を依頼する
- 請求者が保険会社へ請求書類を提出する
- 保険会社は、請求書類を、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所へ請求書類を送付する
- 被害者請求の場合:自賠責保険会社を経由にて
- 任意保険一括請求の場合:任意保険会社を経由にて
- 自賠責損害調査事務所は、請求書類に基き、事故の内容、後遺障害と事故との因果関係があるかどうかなどを調査する
- 自賠責損害調査事務所は、調査結果を損害保険会社等に報告する
- 保険会社が、支払額を決定し請求者に支払いをする
後遺障害の等級認定は、保険会社各社がバラバラに認定するのではなく、全国的な一定の基準のもと、損害保険料率算出機構が共同査定を行っています。
書面主義
損害保険料率算出機構の等級認定は、書面主義 です。保険会社を経由した、被害者の提出した請求書類により審査されます。
書面主義 における審査基準
- その人の後遺症が、後遺障害別等級表のどの級のどの号の要件に合致しているか
- その人の後遺症は、事故との確かな因果関係があるか
後遺障害等級の基準・要件を把握し、 ポイントをおさえた立証資料による書類を準備して、等級認定を受けなければ、納得のできる後遺障害等級認定は受けられません。
等級認定での課題
後遺障害等級認定は、自賠法施行令別表(後遺障害別等級表・労働能力喪失率)に定められています。
各等級の該当範囲を、どう解釈し等級を決定するかは、自賠責保険での実務、裁判所による認定評価において、症例によって、立証の程度によって判断の差が生じています。
医学的な評価が基本でありますが、医学的解明の「グレーゾーン」(分類のハザマ)の扱い、つまり等級が12級なのか11級なのか、明確に判断ができない場合など、その扱いによって争点となってしまうことがあります。
被害者側としては、
「自分は、ケガもし、後遺症も残っているのだから、加害者や保険会社は、後遺障害の認定に協力するのが当然だ」
と考えがちです。
被害者となってしまった方のこういった感情は十分に理解できます。
しかし、決められたシステムの中で、損害賠償が行われますので、いつまでもそういった感情にばかり囚われていては、納得いく賠償への道が閉ざされかねません。
「自分から積極的に損害を立証する」という姿勢で、書類、立証資料を準備することが必要となります。
後遺障害等級認定への異議申し立て
後遺障害の等級認定に不服がある場合は、時効となっていなければ、何回でも不服申立て(異議申し立て、再審査請求)が可能です。
不服申立て(異議申し立て、再審査請求)は、認定をした損害保険料率算出機構へ行い、その判断へも不服があれば、最終的には、一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構 への異議申立てをおこない、「調停」という裁決を受けることになります。
不服申立て(異議申し立て、再審査請求)は、書面によって異議申立ての趣旨を明確にし、「不服」を主張しなければなりません。
単に「不服である」旨だけでは足らず、再審査が必要であること納得させるだけの、書類、立証資料が必要となります。
有効な不服申立て(異議申し立て、再審査請求)を行うためには、主治医の全面的な協力と後遺障害の異議申立てに精通した専門家の関与が不可欠です。