事業所得者の休業損害計算法
休業損害の概略は、別ページ(休業損害とは)にて解説していますが、現実に収入減が認められたときには、事業所得者にも休業損害が認められます。
事業所得者とは、原則として白色申告・青色申告事業主のことを意味しています。
休業損害の計算方法は以下の式によります。
以下に計算式にある「事故前1 年間の収入額 」「必要経費 」と「寄与率 」について、説明します。
収入額の立証資料
「事故前 1 年間の収入額」を証明には、以下の書類が必要となってきます。
(事業所得者の事情により、必要となる書類は異なってきます。)
- 確定申告書の控
- 確定申告書の控の添付書類
- 白色申告者の場合:収支内訳書の控
- 青色申告者の場合:所得税青色申告決算書の控
- 市町村長発行の住民課税証明書(1.の翌年度分のもの)
- 税務署長発行の納税証明書(事故の前年度分。1,と同じ年度のもの)
- 帳簿、領収書、取引先の支払証明など(1~4 の資料が提出できない場合、または補充的資料として)
- 職業証明書
立証資料の提出がない場合でも、取引先などの関係先に照会し、休業によって収入に減少を来すことが推定出来る場合は、定額の日額 5,700 円が認定されます。
必要経費とは
収入額は、売上額から、必要経費を差し引く訳ですが、必要経費とは、原価、経費などのことです。
この経費の中には、固定費は含まれません。 休業中も事業を維持、存続させるために支出しなければならない租税公課、損害保険料、減価償却費、地代、家賃など固定費部分の額は、売上額から差し引かずに計算します。
寄与率とは
事業所得には、事業主自身の働きによる利益だけでなく、事業者の家族や従業員の働きによる利益が含まれている場合があります。 これらの事業専従者が労働提供をして給与を受けている場合、その給与は経費であり、事業所得者本人の所得ではありません。
この場合、事案ごとに検討が必要になってきます。
休業している場合
被害者である事業主の寄与率は 100 %と考えられます。(休んでいますから、事業専従者の労務の提供もありません。)
事業者の休業中に営業が継続されている場合
青色申告の事業主
本人の所得額が明示されていますので、寄与率減額はされません。
白色申告等の事業主
- 年間正味所得が 200 万円以下の場合、寄与率減額はされません。
- 年間正味所得が 200 万円以上の場合、60 ~ 80 %を基準として事業主本人の寄与率が決められます。
60 ~ 80 %は目安であり、実情に応じて適宜決めることとなります。
寄与率控除の結果、正味所得金額が 200 万円を下回った場合、200 万円を収入額として休業損害日額を計算します。
事業所得者の休業損害の決定
一口に事業所得者といっても、職種や事業の規模など様々です。 一様に収入額の決定をすることは出来ません。
どの様な書類によって収入額を証明するかは、保険会社の支持によって書類を提出することとなると考えられますが、保険会社任せでは、定額の日額 5,700 円とされてしまう可能性が高いといえます。
被害者ご自身で積極的に収入額を計算し証明することをおすすめします。