休業損害 – 学生 その他の方

学生寮の看板

本来の収入がない学生の方、無職の方でも状況によっては「休業損害」が認められます。

学生の方

アルバイト休業損害

学生の方は、「学校に通って勉学に励む」のが本業ですよね。
そういった考え方から、基本的には、「学生の休業損害」は、特別に考慮されてはいません。

しかし、実際は、学費、生活費の不足部分を補う目的で、多くの学生の方がパートやアルバイトでの仕事をしているのが現状です。
アルバイトをしている学生の方の中には、休業してしまうと、学生としての生活ができなくなってしまう方もいるかと思います。

学生の方も、交通事故に遭って被害者となってしまっての休業に関しては、アルバイト先に、休業損害証明書を書いてもらい、収入の減額を証明して、休業損害が補償される可能性があります。

個人経営の飲食店などでは、休業損害証明書に書き方が解らないかもしれません。
被害者の方が、休業損害証明書の書き方についての知識を得ておく必要があるでしょう。

就職前の学生の場合

交通事故でケガをしてしまって、就職の時期が遅れて、その期間に得られたはずの収入が得られなかった場合、休業損害が認められる場合があります。

就職先が内定していた方

就職先で、現実に得られたであろう給与額を基礎収入額として算定されます。

就職先が内定していない方

賃金センサスの初任給で、学歴別の平均賃金を基礎収入額として算定されます。

  • 高校卒業生:18歳~19歳の平均値
  • 大学卒業生:20歳~24歳の平均値

無職の方の休業損害

交通事故の当時に、無職であった方の休業損害は、無職であり、働いていないのだから認めれれないのでしょうか・・・?

いいえ、一定の条件で休業損害が認められる可能性があります。

交通事故の発生時に就職先が決まっていた場合

認められる期間:就職予定日時から、稼働可能となった日まで
認められる額:就職予定先で得られるはずであった収入額

就職先が決まっていない場合

認められるか否かを決定する要素

  • 求職活動をしていたか否か
  • 客観的な雇用情勢
  • 本人の能力
  • 学歴
  • 職歴
  • 求めている職種
  • 実際に再就職が可能と考えられる時期
  • 以前に得ていた給与水準
  • 実際に再就職した場合の給与水準

上記の要素を考慮して、認められる可能性があります。

就職活動中であったり、就労開始の準備中であれば、認められる可能性が高くなります。


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休業損害 – 事業所得者の場合

事業所得者の休業損害計算法

自転車

休業損害の概略は、別ページ(休業損害とは)にて解説していますが、現実に収入減が認められたときには、事業所得者にも休業損害が認められます。

事業所得者とは、原則として白色申告・青色申告事業主のことを意味しています。

休業損害の計算方法は以下の式によります。

休業損害 =(事故前 1 年間の収入額-必要経費)÷ 365 日 × 寄与率 × 休業日数

以下に計算式にある「事故前1 年間の収入額 」「必要経費 」と「寄与率 」について、説明します。

収入額の立証資料

「事故前 1 年間の収入額」を証明には、以下の書類が必要となってきます。
(事業所得者の事情により、必要となる書類は異なってきます。)

  1. 確定申告書の控
  2. 確定申告書の控の添付書類
  3. 白色申告者の場合:収支内訳書の控
  4. 青色申告者の場合:所得税青色申告決算書の控
  5. 市町村長発行の住民課税証明書(1.の翌年度分のもの)
  6. 税務署長発行の納税証明書(事故の前年度分。1,と同じ年度のもの)
  7. 帳簿、領収書、取引先の支払証明など(1~4 の資料が提出できない場合、または補充的資料として)
  8. 職業証明書
自賠責保険では、税務署の受付印のある確定申告書の控、添付書類の控が必須となります。

立証資料の提出がない場合でも、取引先などの関係先に照会し、休業によって収入に減少を来すことが推定出来る場合は、定額の日額 5,700 円が認定されます。

必要経費とは

収入額は、売上額から、必要経費を差し引く訳ですが、必要経費とは、原価、経費などのことです。

この経費の中には、固定費は含まれません。 休業中も事業を維持、存続させるために支出しなければならない租税公課、損害保険料、減価償却費、地代、家賃など固定費部分の額は、売上額から差し引かずに計算します。

寄与率とは

事業所得には、事業主自身の働きによる利益だけでなく、事業者の家族や従業員の働きによる利益が含まれている場合があります。 これらの事業専従者が労働提供をして給与を受けている場合、その給与は経費であり、事業所得者本人の所得ではありません。

この場合、事案ごとに検討が必要になってきます。

休業している場合

被害者である事業主の寄与率は 100 %と考えられます。(休んでいますから、事業専従者の労務の提供もありません。)

事業者の休業中に営業が継続されている場合

青色申告の事業主

本人の所得額が明示されていますので、寄与率減額はされません。

白色申告等の事業主
  1. 年間正味所得が 200 万円以下の場合、寄与率減額はされません。
  2. 年間正味所得が 200 万円以上の場合、60 ~ 80 %を基準として事業主本人の寄与率が決められます。
    60 ~ 80 %は目安であり、実情に応じて適宜決めることとなります。
    寄与率控除の結果、正味所得金額が 200 万円を下回った場合、200 万円を収入額として休業損害日額を計算します。

事業所得者の休業損害の決定

一口に事業所得者といっても、職種や事業の規模など様々です。 一様に収入額の決定をすることは出来ません。

どの様な書類によって収入額を証明するかは、保険会社の支持によって書類を提出することとなると考えられますが、保険会社任せでは、定額の日額 5,700 円とされてしまう可能性が高いといえます。

被害者ご自身で積極的に収入額を計算し証明することをおすすめします。

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主婦の休業損害は・・・?

治療中 専業主婦は「給与」を受け取っていないから「休業損害」の補償はないのでしょうか・・・?

いいえ、専業主婦であっても「主婦業」ができなくなってしまった期間は、「休業損害」が補償されます。

その額は・・・?

自賠責保険の基準では、1日=¥5,700ですが・・・

「休業損害」って・・・

交通事故に遭ってしまって仕事ができない・・・「当然、休業しなければならなかった期間の所得の減少は補償してもらいたい。」もっともな主張です。

交通事故損害賠償では「休業損害」として、これらを補償しています。

サラリーマンであれば、勤務先からの「休業損害証明書」により証明された休業日数、減額された給与額にもとづき、自営業者であれば、事故前年度の所得税確定申告書と診断書の治療日数にもとづき、「休業損害」が算定されます。

では、専業主婦は・・・

家事労働は、金銭換算される!

専業主婦の行う、家事労働は金銭的に評価されます。

これは、最高裁判所が「家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を上げているのである」と認めています。(最高裁判判例 昭和50年7月8日 集民115号267頁、 最高裁判判例 昭和49年7月19日 民集28巻5号872頁)

家事労働はいくら・・・?

専業主婦の場合

先にあげた最高裁判例は、女子労働者の平均賃金に相当する財産上の収益をあげるものと判断しています。

つまり、女子労働者の全年齢の平均賃金を基礎として算出されます。

平成23年の賃金センサスのよれば、この金額は、年額¥3,559,0001日あたり、¥9,750です。

兼業主婦の場合

兼業主婦の場合には、家事労働ができないことによる損害と従事する仕事を休業したことによる損害とが発生しますが、双方を合わせて損害賠償請求することは認められず、いずれか高額なほうを請求することとなります。


保険会社の対応は

保険会社は、被害者が主婦の場合、低額であるパートの収入の「休業損害」のみ、または自賠責保険の基準である、1日=¥5,700を提示してくる場合があります。 慎重に対応してください。

ちなみに、最近は「専業主夫」という方もいらっしゃいますが、男性であるからと言って賃金センサスの男性平均とはなりません。


 一人暮らしの場合

家事従事者としての休業損害は認められません。(東京地判平成22年2月9日交民43巻1号123頁)

家事従事者に休業損害が発生するためには、自分以外の第三者に対し家事労働力を提供していることが必要と考えられているようです。

認められる休業期間は・・・

家事労働ができなかった期間ということですが・・・

入院期間:その全部を休業期間と認める 通院期間:受傷内容、受傷部位、治療経過、回復の度合い、家族構成などを総合的に考慮して休業の割合を決定(例:70%を認めるなど)。

現実にどの程度、家事労働に支障が生じたのかは、客観的な指標はなく、被害者の方の自己申告によることになります。通院を怠らずに治療をつづけ、医師の指示に従っていることが必要かと思われます。

なかなか、難しい部分です。

高齢者主婦の場合

専業主婦の家事労働の財産上の収益は、年額¥3,559,0001日あたり、¥9,750ですが、同じ主婦でも、夫と育ち盛りの子供のいる主婦と、子育てを終え夫と2人暮らしの高齢者の主婦とでは家事労働の負担が違ってきます。

基本は、「全年齢」の平均賃金ですが、家事労働の負担が比較的軽い高齢者の主婦では、年齢に応じた賃金センサスを使う場合があります。

  • 全年齢  = 年額¥3,559,000、1日あたり、¥9,750
  • 60~65歳 = 年額¥2,964,200、1日あたり、¥8,121
  • 65~69歳 = 年額¥2,740,500、1日あたり、¥7,508

計算例

専業主婦のAさんは、交通事故に遭って腕を骨折、30日間入院し、その後90日間通院し症状が固定し、自賠責保険で後遺障害12級の認定を受けました。Aさんの家族は、会社員の夫と小学生の男の子の3人家族です。 この場合のAさんの休業損害は・・・

夫と男の子の3人家族であり、Aさんは家事労働者である。

基礎収入額:年額=¥3,559,000、日額=¥9,750

入院による休業損害:¥9,750 × 30日=¥292,500 通院による休業損害 後遺障害等級が認定されているので、傷病の程度は軽いとはいえず、家事に相当の支障が生じたので80%が認められた。

:¥9,750 × 90日 × 80%=¥702,000

休業損害:入院による休業損害+通院による休業損害=¥292,500+¥702,000=¥994.500

Aさんの休業損害は、¥994.500となります。


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